字幕を見れば、難しい単語はほとんどない。それなのに、音声だけになると何を言っているのかわからない。そんな経験はありませんか。
「単語の勉強が足りないのかな」と考える前に、確かめたいことがあります。それは、文字を見てわかる英語と、耳から入ってわかる英語の間に、どんなズレがあるかです。
たとえば Can you help me?キャン ユー ヘルプ ミー は読めても、会話では一語ずつ同じ強さで発音されるとは限りません。短く弱くなる音や、前後の単語とつながる音があるため、覚えていた響きと違って聞こえることがあります。
この記事では、知っている英単語が聞き取れない原因を整理し、10のチェックと、短い音声を使った練習手順を紹介します。各項目の音声を聞き、答えの英文と照らし合わせて、自分の聞き逃し方を調べてみてください。手元の教材でも同じ手順を試せます。
知っている単語が聞こえないのは、なぜ?
「知っている」には、いくつかの段階があります。
| 確認する力 | できることの例 |
|---|---|
| 文字と意味が結びついている | available を見て「利用できる・空いている」とわかる |
| 単語の音と意味が結びついている | 辞書の音声を聞いて、単語と意味が浮かぶ |
| 会話の中でも見つけられる | Are you available tomorrow?アー ユー アヴェイラブル トゥモロウ の中で、その単語を捉えられる |
| 文の意味まで追える | 「明日は空いていますか」と、その場で理解できる |
上の段階ができても、次の段階が自動的にできるとは限りません。単語単体の音はわかるのに、文の中では見失う人もいます。音は拾えても、意味を考えているうちに次の文へ進んでしまう人もいます。
まずは「聞き取れなかった」を一つの原因で片づけず、どこで止まっているかを分けてみましょう。
音のズレを見つける10のチェック
用意するのは、英文の答えが確認できる、短くて比較的やさしい音声です。英語教材やレッスンの音声なら、利用できる範囲のものを使ってください。単語そのものの発音は、学習者向け辞書の音声でも確認できます。
以下の英文は、確認したいポイントを示す例です。各項目の音声で聞こえ方を確かめ、手元の教材に出てくる似た表現でも試してみましょう。10項目を一度に練習する必要はありません。
チェック1|単語そのものの音を、思い込みで覚えていないか
例:busy / comfortable / actually
文字から想像した音と、実際の発音がずれていると、その単語を知っていても見つけにくくなります。まずは辞書の音声を、文字を見ずに聞いてみましょう。
聞いたあとに単語を表示して、「そういう音だったのか」と感じたら、まず単語単体の音を確かめることから始めましょう。
試すこと: 音声を聞く → 綴りと意味を見る → もう一度聞く。カタカナに置き換えるだけで終えず、音の長さや強さにも注意を向けます。
チェック2|単語のどこが強くなるか、わかっているか
例:important / development
英単語は、すべての部分を同じ強さで発音するとは限りません。自分が想像していた場所と違うところが強く聞こえると、知っている単語でも別の音のように感じることがあります。
試すこと: 辞書音声を聞き、いちばん目立つ部分に印をつけます。そのあとで辞書のアクセント表示を確認し、もう一度音と照らし合わせてください。
一つの国や地域の音だけを唯一の正解にせず、まずは今使っている教材の発音を観察しましょう。
チェック3|語尾を「はっきりした一音」で待っていないか
例:I worked late.アイ ワークト レイト / Please sit down.プリーズ スィット ダウン
語尾の子音は、いつも日本語の一拍のようには聞こえません。次の音との関係で、破裂がはっきり聞こえないこともあります。
試すこと: スクリプトで語尾を確認してから、該当箇所を短く聞き直します。「聞こえにくいから、発音されていない」とすぐに決めず、直前の母音や次の音まで含めて聞いてみましょう。
時制や単複の判断は、音だけでなく文全体の意味からも確かめます。
チェック4|単語の切れ目に、毎回すき間を期待していないか
例:turn off / pick it up
前の単語の終わりと、次の単語の始まりがつながると、覚えていた単語の輪郭が変わって聞こえることがあります。
試すこと: turn / off のように分けて考えたあと、音声ではどこまでが一つのまとまりに聞こえるかを確かめます。聞こえたまとまりを、英文の上で線でつないでみてください。
単語を一つずつ追いかけるだけでなく、短いかたまりでも聞く練習です。
チェック5|a・an・the が、弱くなることに気づけるか
例:I need a pen.アイ ニード ア ペン / It’s on the table.イッツ オン ザ テイブル
冠詞は、文の中で強調されないときに短く弱くなることがあります。辞書で単独の音を覚えただけだと、会話では拾いにくい場合があります。
試すこと: 名詞だけでなく、その直前まで聞きます。答えの英文を見て冠詞に丸をつけ、もう一度音声を聞いてください。
聞き取りにくい冠詞を無理に大きく発音するより、まずは音声の中でどう聞こえているかを確認しましょう。
チェック6|to・for などを、いつも強い音で待っていないか
例:I want to go.アイ ウォント トゥー ゴウ / This is for you.ディス イズ フォー ユー
前置詞なども、強調されない場面では弱い形になることがあります。「覚えている強い発音が来るはず」と待っていると、通り過ぎてしまうかもしれません。
試すこと: 教材の音声とスクリプトを照らし合わせ、どの語が長く強く、どの語が短く聞こえるかを区別します。単語数と、強く聞こえた音の数は一致しなくても構いません。
同じ単語でも、対比や強調があれば聞こえ方は変わります。
チェック7|助動詞や代名詞まで、同じ強さで聞こうとしていないか
例:Can you help me?キャン ユー ヘルプ ミー / What are you doing?ワット アー ユー ドゥーイング
助動詞や代名詞も、文の中で短くなることがあります。大事な内容語だけが目立ち、間の語を見失うこともあるでしょう。
試すこと: 一度目は「どの言葉が目立ったか」をメモします。英文を見たあとで、間にあった短い語を確認し、文全体を聞き直してください。
すべての語を同じ音量で聞き取ることより、目立つ語とその間の音を結びつけることを意識します。
チェック8|教材や話者による発音の違いで戸惑っていないか
例:water / better / get it
同じ単語でも、地域や話者によって音は異なります。たとえば一部のアメリカ英語では、一定の環境で t が、日本語の「タ行」とは違う軽い音に聞こえることがあります。
試すこと: 辞書に複数の発音音声があれば聞き比べます。「自分の覚えた音と違う」を「間違った音」と判断せず、同じ単語の別の聞こえ方として確かめましょう。
一つの変化を、すべての話者やすべての文に当てはめないことも大切です。
チェック9|どこからどこまでが一語か、見失っていないか
例:an appleアン アップル / a lot ofア ロット オヴ / at allアット オール
音がつながると、単語の境界を違う場所に置いてしまうことがあります。知らない長い単語に聞こえた部分が、実は知っている短い語の集まりだった、というケースです。
試すこと: 聞こえた音を無理に一語へ当てはめず、英文の語数を確認します。そのあと、二〜四語程度のまとまりで聞き直しましょう。
「どの単語を知らなかったか」に加えて、「どこで区切りを取り違えたか」もメモすると、次の練習を選びやすくなります。
チェック10|音は拾えても、意味を考える間に置いていかれないか
例:I was going to call you after work.アイ ワズ ゴウイング トゥー コール ユー アフター ワーク
止めながらなら理解できるのに、続けて聞くと追いつかない場合は、音の識別だけが原因とは限りません。語順や表現の意味を処理するのに時間がかかっていることもあります。
試すこと: スクリプトを読んで、すぐ意味がわかるかを確認します。読む場合にも時間がかかるなら、まず短い文で語順と意味を整理しましょう。
読めばすぐわかる場合は、I was going to call youアイ ワズ ゴウイング トゥー コール ユー / after workアフター ワーク のような意味のまとまりを意識して聞きます。すべてを一語ずつ日本語に直すことを、練習の目標にする必要はありません。
01
単語の音を知る
綴りから想像せず、
辞書音声で響きを確かめる。
02
文の中の音を探す
つながる音・弱くなる音を、
短い区間で観察する。
03
意味まで結びつける
聞こえた語句が何を伝えるか、
音だけで確かめる。
原因は一つとは限りません。今日扱う場所を一か所選びましょう。
10分でできる、短い音声の練習手順
聞き逃す場所が見つかったら、同じ音声を長時間流す前に、短い区間で確かめます。まずは10秒前後の、内容を確認できる音声で十分です。長さや回数は、自分の負担に合わせて調整してください。
1.英文を見ずに聞き、わかったことを残す
最初から全文を書き取る必要はありません。「誰が何をしたか」「どの単語が聞こえたか」をメモします。聞き取れなかった部分は空欄や「?」で残して構いません。
2.スクリプトを見て、原因を一つ選ぶ
知らない単語なら意味と発音を調べます。知っている単語なら、上のチェックを使って「単語自体の音」「つながりや弱い音」「意味の処理」のどこが難しかったかを考えます。
「全部だめだった」で終えず、今日は一か所だけ決めましょう。
3.短いまとまりで、音と文字を照合する
聞き逃した部分を短く聞き直し、英文のどこに当たる音かを確かめます。必要なら速度を少し落として確認し、最後に元の速度でも聞きます。
声に出してまねるのは、音の長さや強弱に気づく補助になります。ただし、うまく発音できないから聞けない、と決めつけなくて大丈夫です。目的は、聞こえた音と意味を結びつけることです。
4.英文を閉じて、もう一度意味を捉える
答えを見ながら聞けた状態と、音だけでわかる状態を分けて確認します。最後は英文を閉じ、何を伝えているかを自分の言葉で説明してみてください。
翌日にも同じ短い区間を音だけで聞き、意味が取れるか確かめます。同じ音声を覚えただけで終わらせず、少し慣れたら似た表現を別の音声でも探しましょう。
聞き取りの記録は「原因」と「次にすること」だけでいい
ノートをきれいに作るより、次の練習に使える記録を残します。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 聞こえなかった表現 | I want to go.アイ ウォント トゥー ゴウ の to |
| 読めばわかったか | すぐわかった |
| 今日気づいたこと | to を強い音で待っていた |
| 次にすること | 同じ音声を、英文を閉じてもう一度聞く |
| 次回の確認 | 別の文の to にも気づけるか |
一回で原因を断定できなくても構いません。「単語単体なら聞ける」「文になると境界を見失う」と、少しずつ分けられれば練習は具体的になります。

よくある質問
聞き流しを続ければ、知っている単語が聞こえるようになりますか?
英語に触れる時間を作る方法の一つですが、どこで聞き逃しているかを確認するには、答え合わせできる短い音声も組み合わせたいところです。内容がほとんどわからない音声だけを長時間流すより、理解できる部分がある教材で、音と文字と意味を照合してみてください。
シャドーイングをすれば解決しますか?
音のつながりやリズムに注意を向ける練習にはなります。ただし、意味や音の違いを確認しないまま追いかけると、どこが改善したかを判断しにくくなります。まず短い区間を理解し、まねたあとに音だけでも意味を取れるかを確かめましょう。
すべての音の変化を暗記したほうがいいですか?
最初から網羅する必要はありません。今の教材で繰り返し聞き逃す表現から確かめるほうが、練習を始めやすくなります。変化は話者・速度・強調によっても異なるため、ルールだけで聞こえ方を決めないようにしましょう。
今日の練習は「聞き逃した一か所」から
知っている英単語が聞き取れないときは、単語を増やす勉強に加えて、覚えている音と実際の音を照らし合わせてみてください。
今日することは、短い音声を一つ選び、「どこが聞こえなかったか」「読めばわかるか」「次に何を確かめるか」を残すこと。聞き取れなかった経験を、次に試せる練習へ変えていきましょう。
参考資料
- British Council TeachingEnglish:Connected speech 1 — 連続した発話で起こる弱形や音のつながりについて。本文の練習例・記録シートは当記事で作成しています。
01
短い区間を選ぶ
答えの英文が確認できる、
やさしい音声を使う。
02
音と文字を照らす
聞けなかった一か所の
音・意味・つながりを確認。
03
文字を隠して聞く
少し間を空けてもう一度。
音だけで意味を追えるか確認。
一度に長い音声へ広げず、小さな違いを確かめていきましょう。
自分に合った学習の順番を、
ここから。
聞き取りの練習と、単語・文法・話す練習をどう組み合わせるか。自分に必要な順番も整理してみましょう。
ライブ授業「英語学習の新常識」では、言葉が出てこない理由や、自分に合う学び方など、英語学習を5つの視点から見直します。
















