こんにちは、感覚ではなく理解で学ぶ「大人の英語スクール」代表のShigeです。

前回は、英語を「学問」ではなく「物理的なスポーツ」として捉え直し、長年あなたを苦しめてきた「音の壁=カタカナフィルター」を破壊しました。

正しい発音という強固な土台が完成した今、次に行うべきは、その音の上にあなたの「思考」や「感情」を乗せる作業です。

それが今回のテーマである「文法」になります。

代名詞とbe動詞のペアが並んだ写真

しかし、「文法」と聞いた瞬間、少し嫌な汗をかいた方もいるのではないでしょうか。

「SVO」「関係代名詞」「仮定法過去完了」……。

学生時代、分厚い参考書とにらめっこしながら、呪文のような文法用語をひたすらノートに書き写して丸暗記させられた、あの苦い記憶が蘇りますよね。

ここで一つ、ハッキリとお伝えします。

文法を学び直すときは、ルールを暗記するだけでなく、どんな場面で使うのかを確かめましょう。手元の文法書も、例文の意味や使い方を調べるために活用できます。

なぜなら、ネイティブスピーカーは会話中、そんな小難しい「ルール」など1ミリも考えていないからです。

彼らが言葉を発する時、脳内にあるのは文字の羅列や規則ではなく、もっと直感的で生々しい「映像」や「感覚」です。

この記事では、あなたを縛り付けてきた「ただ闇雲に暗記する」という苦行を永遠に終わらせます。

無味乾燥なルールを丸暗記する代わりに、ネイティブの脳内にある「コアイメージ」をインストールしてみてください。

明日から、あなたにとっての文法が「とにかく間違えてはいけないトラップ」から「自分の思っていることを伸び伸びと表現するための最高のパートナー」へと変わっていることをお約束します。

【第1章】学校英語の最大の弊害。「日本語訳」で文法を覚える悲劇

私たちは中学校、高校と、最低でも6年間は英語の文法を学んできました。

それにもかかわらず、なぜいざ外国人を目の前にすると、簡単な自己紹介すら口から出てこないのでしょうか。

その根本的な原因は、あなたの記憶力や語学のセンスにあるわけではありません。

学校で教わってきた「1つの英文法につき、1つの日本語訳を当てはめる」という学習システムそのものが、実際の英会話においては致命的なバグを引き起こすからです。

英語は「日本語のパズル」ではない

学校の授業を思い出してみてください。

  • 「不定詞(to+動詞の原形)=〜すること」

  • 「現在進行形(be動詞+ing)=〜しているところだ」

  • 「must=〜しなければならない」

このように、英単語や文法規則に対して、必ず「正解となる日本語訳」がセットで教えられてきました。

まるで、英単語というパズルのピースを、日本語という枠組みに無理やり当てはめて動かすような作業です。

しかし、英語と日本語は、歴史も文化も根底にある思考回路も全く異なる言語です。そもそも「1対1で完璧に翻訳できる」と考えること自体が幻想なのです。

パズルのように単語を並べ替え、正しい日本語に訳せた人がテストで高得点を取る。この「翻訳のクセ」が染み付いている限り、あなたは英語の本当の姿を捉えることができません。

テストの丸暗記が会話で通用しない理由

では、この「日本語訳の丸暗記」のまま実際のネイティブとの会話に臨むと、脳内で何が起きるのでしょうか。

ネイティブが発した言葉に対して、英語で返答しようとしたときのあなたの脳の動きを見てみましょう。

  1. 相手の英語を聞き取る

  2. 脳内で「日本語」に翻訳して意味を理解する

  3. 自分が言いたいことを「日本語」で考える

  4. それに当てはまる「文法のルール(SVOなど)」を記憶から検索する

  5. 単語をパズルのように当てはめ、英語の文章を組み立てる

  6. 実際に口に出す

いかがでしょうか。

この途方もなく遠回りなプロセスを、会話のキャッチボールの中で瞬時に行おうとしているのです。

人間の脳の「ワーキングメモリ(一時的に情報を処理する容量)」には限界があります。

机に向かってじっくり考えるテストなら通用しても、テンポよく進むリアルな会話の中でこんな複雑な処理をしようとすれば、脳は一瞬でショートします。

「えっと、過去のことだから動詞を-edの形にして…あ、疑問文だからDidを前に出して…」

そうやって頭の中でルールを検索している間にフリーズしてしまい、言葉に詰まって愛想笑いをしてしまう。

これが、英語を話せない多くの日本人の脳内で起こっていることです。

英語を話すために本当に必要なのは、日本語を介した「翻訳」のスピードを上げることではありません。

「日本語に訳す」というプロセスそのものを、脳内から完全に消し去ることなのです。

【第2章】暗記を捨てる魔法。「コアイメージ」で世界を捉える

「日本語に訳す」というフィルターを脳内から完全に外す。

では、代わりに何をインストールすれば、ネイティブのように言葉がスラスラと出てくるようになるのでしょうか?

その答えが、単語や文法が本来持っている「コアイメージ」です。

文字ではなく「映像・感覚」としてインストールする

コアイメージとは、ネイティブが言葉を発する前に脳内に描いている「物理的な感覚」や「映像」のことです。

彼らは「SVOが…」や「ここは過去分詞にして…」といった文字の羅列(ルール)で世界を捉えていません。

言葉の根源にある「イメージ」を、そのまま相手にぶつけているだけなのです。

これを理解していただくために、日本人が最もつまずきやすく、学校のテストで何度も間違えてきた「時制」を例に出しましょう。

時制の罠:過去形(I lost)と現在完了形(I have lost)の決定的な違い

あなたが家の鍵をなくしてしまったとします。

学校のテストでは、次の2つの英文はどちらも「私は鍵をなくした」と訳せば正解でした。

  • A:I lost my keys.アイ ロスト マイ キーズ(過去形)

  • B:I have lost my keys.アイ ハヴ ロスト マイ キーズ(現在完了形)

日本語に訳すと全く同じになってしまうこの2つの文。

だからこそ、私たちは「現在完了形=継続・経験・完了」などという呪文のような用法を必死に暗記し、テストの文脈から無理やり正解を推測するしかありませんでした。

しかし、コアイメージというレンズを通すと、この2つは「全く別の映像」として脳内に浮かび上がります。

【過去形(I lost)のコアイメージ】

過去形のコアイメージは、今とは完全に切り離された「過去の点」です。

「I lost my keys.アイ ロスト マイ キーズ」と言ったとき、ネイティブの頭の中には「過去のある時点で鍵をなくした」という事実の映像しかありません。

重要なのは、「今の状態はどうでもいい(無関係)」ということです。

昨日見つかったのか、まだ見つかっていないのかは、この文だけでは分かりません。「過去に鍵をなくした」という出来事を伝えています。

【現在完了形(I have lost)のコアイメージ】

一方、現在完了形はどうでしょうか。

ここで鍵となるのは「have」のコアイメージです。

「have」の根源的なイメージは「持っている(自分の空間に抱え込んでいる)」こと。

つまり、「I have lost my keys.アイ ハヴ ロスト マイ キーズ」の映像は、過去の「鍵をなくした」という出来事を、今現在も背負い続けている(haveしている)感覚なのです。

ネイティブがこの言葉を発する時、その裏にはこんな生々しい感情が隠れています。

「鍵をなくしてしまった。(だから今、目の前のドアが開けられなくて、家に入れなくてマジでヤバいんだよ!どうしよう!)」

現在完了形とは、「過去の出来事が、今この瞬間に迫ってきているヤバい状態」を伝えるための極めて感情的なツールなのです。

いかがでしょうか。

「継続・経験・完了」という無味乾燥な日本語のルールを暗記しなくても、「have(今持っている)」というコアイメージ一つを知るだけで、なぜここで現在完了形を使うべきなのかが、手に取るようにわかったはずです。

これが、暗記を捨て(日本語訳を介さず)、ネイティブの「感覚」をそのままインストールするということなのです。

【第3章】文法は「ルール」ではない。あなたの「感情を伝えるツール」だ

コアイメージの威力を実感していただけたでしょうか。

この感覚を掴むと、文法に対する捉え方が根底から覆ります。

「テストで減点されないための法律」からの脱却

なぜ、私たちは英語を話そうとすると極度に緊張し、言葉に詰まってしまうのでしょうか。

それは心のどこかで、文法を「絶対に破ってはいけない法律」や「テストでバツをつけられないための規則」だと思い込んでいるからです。

「三人称単数だから、動詞にsをつけなきゃ…」

「ここは過去完了形にするべきか…間違えたら恥ずかしい」

頭の中で仮想の「文法警察」に怯えながら話している状態です。

しかし、実際のネイティブ同士の会話において、そんな重箱の隅をつつくような減点方式は存在しません。彼らにとって文法とは、人を縛り付けるルールではなく、もっと自由で人間くさいものです。

文法は自分のリアルな感情を相手に届けるためのツールである

新しい定義をインストールしましょう。

文法とは、

自分が今「どういう気持ちなのか」「どれくらい切羽詰まっているのか」「どういう状況に置かれているのか」を相手に正確に、そして豊かに届けるための「表現のツール」です。

先ほどの鍵をなくした例を思い出してください。

「I have lost my keys.アイ ハヴ ロスト マイ キーズ」という言葉が口から出るのは、

「主語がIで、過去の出来事が現在に影響を及ぼしているから、have+過去分詞のルールを適用しよう」

と考えた結果ではありません。

「今、家に入れなくてマジで困っているこの絶望感を伝えたい!わかってくれ!」という強い感情があるからこそ、無意識に「have」というコアイメージ(今抱え込んでいる感覚)を引っ張り出してくるのです。

「〜しなければならない」というルールで丸暗記した「must」も同じです。

「You must go.ユー マスト ゴウ」は規則の押し付けではなく、

「(周りからどう言われようと)絶対に行くべきだ!私の中の強いプレッシャーがそう言っている!」という、相手への強烈な感情のぶつけ合いなのです。

コアイメージを掴めば、「正しい文法を探す」のではなく、「今の自分の感情に一番フィットするイメージを選ぶ」という感覚に変わります。

これこそが、日本語を介さずに英語を英語のまま処理する「英語脳」の正体です。

ルールでがんじがらめになっていたパズルから解放され、あなたが本来持っている感情を、そのまま英語の音に乗せて相手に届けることができるようになります。

【次回予告】コアイメージを手に入れた無敵の表現力

いかがでしたでしょうか。 「コアイメージ」というネイティブのレンズを通して世界を見直せば、無味乾燥だった文法は、表現のグラデーションを楽しむ極上のアートに変わります。

分厚い文法書を1ページ目から丸暗記する苦行は、今日で終わりにしましょう。あなたが学ぶべきは、ルールではなく「ネイティブの感覚」なのです。

さて、ここまでのロードマップで、あなたは「発音」で音の壁を壊し、「文法」でネイティブの脳内感覚を手に入れました。

次はいよいよ、言いたいことを瞬時に英語にするための「単語」の極意に迫ります。

テーマは、

【第5回】英単語が覚えられない大人へ。「忘れる」を科学する長期記憶の黄金律|英語脳ロードマップ

です。

もちろん、単語帳を何千語も丸暗記させるようなスパルタ教育ではありません。

大人の脳の仕組みを利用した、圧倒的に効率的で「忘れない」単語のインストール法を公開します。

お楽しみに。