英語の語尾のtやdが聞こえなくても、すぐに「発音されていない」と決めないでください。破裂が聞こえない未開放、音が省かれる脱落、声門で閉鎖する発音は、それぞれ違う現象です。まず違いを知り、実際の音声を短く確かめることが聞き取りの助けになります。
例えば、語末のtの破裂が弱くても、前の母音が終わる様子や次の音への移り方に手がかりが残る場合があります。反対に、つづりを見ているからtがあるように感じることもあります。予想と音で確認できたことを分けましょう。
この記事では基本の区別、語の組み合わせの練習、10分の取り組み方を紹介します。時間は練習を区切る目安で、習得を保証するものではありません。掲載例は自作で音声は添付していません。聞き取りには、音声と原文が一致する素材を別途使ってください。
「ストップT」という名前だけで一つにまとめない
英語の/t/や/d/は、口の中で空気の通り道をいったん閉じて作る破裂音です。日本語の「ト」「ド」のように、後ろへ必ず母音を付ける音ではありません。語末を聞くときに「トゥ」「ドゥ」まで探していると、英語の子音を見失うことがあります。
学習情報では「ストップT」という名前が広く使われますが、何を指すかは説明によって異なります。ここでは名前を覚えるだけでなく、舌による閉鎖があるのか、破裂が聞こえるのか、声門の閉鎖なのかという仕組みを確認します。
未開放:閉鎖はあるが、破裂が聞こえない
未開放は、子音の閉鎖を作っても、外から聞こえる破裂が生じない、または明瞭に聞こえない発音です。/t/なら舌先付近で歯茎のあたりに閉鎖を作ります。子音が丸ごとなくなったこととは区別します。
語末の破裂音の後に別の子音が続くときなどに観察できます。BBCの発音解説でも、語末の破裂音が次の子音へ続く場面で、破裂が聞こえない発音を扱っています。/d/にも起こるので、tだけの特殊規則とは考えないようにします。
脱落:ある音が省かれる
脱落は、連続する発話で音が省かれる現象です。複数の子音が連なる箇所では、/t/や/d/が省かれる場合があります。ただし、つづりにtがあり聞こえにくかったという理由だけで、脱落したとは断定できません。
会話の速さ、強調の仕方、話者によって実現は変わります。自分で読むときに「ここは必ず消す」と機械的に処理する必要はありません。まず明瞭な語の形を押さえ、実際の発話でどんな変化があるか観察しましょう。
声門閉鎖:喉の部分で閉鎖する
声門閉鎖は、声帯の間にある声門で閉鎖を作るものです。/t/の位置で、舌の閉鎖に声門閉鎖が伴う場合と、舌の閉鎖の代わりになる場合があります。この二つも厳密には同じではありません。
「口でtを作り、破裂を聞こえさせない」ことと、「声門で閉鎖する」ことを一つの舌の動きとして覚えないでください。方言や位置による違いがあり、初めから喉に力を入れて再現する必要はありません。
聞き分けでは「分からない」を残してよい
音を聞くだけで、未開放か脱落かを毎回確定するのは難しいものです。録音の質や周囲の音にも左右されます。学習では専門的な分類を当てることより、どこが予想と違ったかを見つけることを優先します。
例えば「lastは分かったが、nightとの境目が不確か」「dの破裂は聞こえないが、次の語への切り替わりは分かる」と記録できます。「全部消えた」と書くより、次の確認場所が明確になります。
原文を見た後も、書いてある子音を無理に聞こえたことにしないでください。再生して確かめ、判定できない箇所は保留します。語全体と文脈から理解できたこと、個々の音として聞けたことを分ける姿勢が大切です。
01
未開放
口の閉鎖があっても破裂が聞こえない
02
脱落
連続する発話で音自体が省かれる
03
声門閉鎖
喉での閉鎖と口の閉鎖を区別する
04
判断を保留
音声から分からない点も記録する
練習する前に、意味と語末の形を押さえる
次は自作の練習用語句です。音の変化を指定する一覧ではありません。太字の語末と次の語の最初の音を確認し、どこを観察したいかを決めるために使います。
| 語句 | 意味 | 確認する境目 |
|---|---|---|
| last night | 昨夜 | /st/に続く/n/ |
| next week | 来週 | /kst/に続く/w/ |
| must go | 行かなければならない | /st/に続く/ɡ/ |
| old friend | 昔からの友人 | /ld/に続く/f/ |
| good morning | おはよう | /d/に続く/m/ |
| right now | 今すぐ | /t/に続く/n/ |
| sit down | 座る | /t/に続く/d/ |
| red bag | 赤いかばん | /d/に続く/b/ |
| at home | 家に、家で | /t/に続く/h/ |
| wait, please | 待ってください | /t/の後の区切りと/p/ |
last nightやnext weekは、子音の連なりを観察する候補です。good morningやred bagでは、破裂が目立たない可能性に注目できます。ただし、この表だけで「これは脱落、これは未開放」と確定することはできません。実際の音声が必要です。
また、語末のdが現在形か過去形かに関わる場合は、意味にも注意します。すべての過去形が/d/で終わるわけではなく、-edには/t/や/ɪd/などの発音もあります。つづりのdだけを探すのではなく、語全体の発音を辞書で確認してください。

短い文にして、構造と音読をつなぐ
I called my old friend last night.
「昨夜、昔からの友人に電話しました」。誰が何をしたかはI called、相手はmy old friend、時はlast nightです。まず意味のまとまりを理解します。その後、oldとfriend、lastとnightの境目を一か所ずつ観察対象にします。
最初の音読では語末を意識してよいですが、oldの後に日本語の「ド」を一拍加えすぎないようにします。次に、語をつないでも文の意味を保てるか確認します。音の変化を試すために、calledという動作やlast nightという時の情報を曖昧にしないことが大切です。
Please sit down right now.
「今すぐ座ってください」。sit downが動作、right nowが時のまとまりです。語末のtが二か所ありますが、まずsit downに絞って読みます。/t/を作った後に大きな母音を足さず、次の/d/へ移る準備をしてみましょう。
ここで無理に息を止め続けたり、喉を締めたりする必要はありません。閉鎖を確認する練習と、自然な速さで文を話す練習は分けます。痛みや強い緊張が出るなら中止し、口の動きを小さくして明瞭に読むところへ戻ってください。
これらの自作英文には音声がないため、「正しい脱落の音を聞き取る問題」には使いません。音読の準備ができたら、原文と一致する別の録音を選び、その録音に実際に含まれる語を調べます。
10分で取り組む精聴と発音の手順
最初の2分:一文を選び、原文を閉じて聞く
音声と原文がそろった学習用素材から、一文または短いやり取りを選びます。難しい語が多い素材なら、もっと短く簡単なものにします。最初は原文を閉じ、聞こえた語と不確かな境目を書きます。
不確かな箇所をもう一度聞き、語末の子音の前後に注意を向けます。破裂が聞こえないのか、語自体を取り違えたのか、まだ判断できないのかを仮に記録します。ここでは答えを見ず、細部を確かめる経験を作ります。
次の3分:原文を開き、語と音を照合する
原文を開き、知らない単語と文の構造を確認します。日本語で内容を整理して構いません。例えば「誰が、何を、いつした」と簡単に言い換え、英文のどこがそれぞれを表すかを確かめます。
そのうえで同じ箇所を再生します。語末にtやdがあるか、次はどの子音かを確認し、文字の予想と聞こえる音を比べます。短く切りすぎると手がかりを失うので、前後の語も含めて聞きましょう。
次の3分:音声を止めてまねし、録音する
理解できた短い範囲を、音声を止めて繰り返します。語末に余計な母音を足していないかを一つの確認点にします。未開放を試す場合も、子音を省くことから始めず、閉鎖を作って次の音へ移る感覚を探します。
録音したら、元の録音と交互に聞きます。録音の条件が違うので音量の大小だけで採点せず、文の意味の区切り、語の輪郭、余計な母音に注目します。専門的な分類は保留でも、改善する箇所は見つけられます。
最後の2分:原文を閉じて聞き直し、記録する
もう一度原文を閉じて聞き、最初に不確かだった境目がどう聞こえるかを確かめます。「語は分かった」「破裂はまだ分からない」のように、できた点と残る点を分けて残します。
10分で終わらなければ、途中で止めて次回同じ箇所を再開して構いません。練習が途切れたことを失敗とせず、一文に戻れる形で記録しておくと続けやすくなります。
仕組みを確かめる確認問題と答え
以下は知識の確認問題です。実際の音声がないため、特定の語句の発音を判定する問題ではありません。答えを隠して説明してみてください。
- 舌の閉鎖はあるが、外から聞こえる破裂がない発音は?
- 連続する発話で、ある音自体が省かれる現象は?
- 舌の閉鎖に代わる声門の閉鎖を、未開放と同じ舌の動きとしてよい?
- つづりにtがあり、音が弱かったら脱落と断定できる?
- 原文から単語を推測できたら、その子音も聞き取れたと言える?
答え: 1は未開放、2は脱落です。3は「同じではない」で、閉鎖を作る場所を区別します。4は断定できず、未開放などの可能性もあります。5も同じではありません。文法・意味から理解できた部分と、実際に音を確認できた部分を分けます。
この区別が説明できれば、専門記号をすべて覚えていなくても練習を始められます。翌日に答えを閉じて同じ区別を思い出し、短い音声に戻って確認すると、知識と観察をつなげられます。
復習用には、聞き直した一文と「原文のどの文字と、どの音を比べたか」を残します。例えば「last nightの境目を再生し、tの破裂は確認できなかった」と書けば、脱落だと断定せず観察を記録できます。翌日は答えを隠してその一文を聞き、同じ点を確かめます。前回と聞こえ方が違っても、慌てて分類を変えず、前後の語を含めて比較してください。

「ト・ド」を足した録音と、子音で終えた録音を比べる
自作のred bagを使い、まず二つの語の意味を確かめます。redはbagを説明しており、「赤いかばん」です。次にredの後へ日本語の「ド」のような母音を足した読み方と、/d/の閉鎖から次の/b/へ移る読み方を、自分で交互に録音します。これは自分の発音を比較する練習で、聞き取り問題ではありません。
後者では、/d/のために舌先付近で閉鎖を作り、次の/b/のために唇を閉じます。必ず大きな破裂音を出してから次の語へ進む必要はありません。口や喉に力を入れすぎず、二つの語の間に余計な母音を挟んだかを聞き比べます。うまく移れないときは、各語を明瞭に発音するところへ戻って構いません。
この録音から「実際の会話ではいつも同じ形になる」とは判断しません。自作例で動きを試した後、別途選んだ原文付きの音声では、その話者がどのように語をつないでいるかを観察します。自分が出せた音と、実際に聞こえた音を分けて記録することが大切です。
よくある質問
tやdは発音しない方が自然ですか?
一律に省く必要はありません。話者や音の環境によって変わります。まず語を明瞭に発音できるようにし、聞き取りでは変化する形も知っておきましょう。
0.1秒など、決まった時間だけ止めますか?
固定の秒数で覚える必要はありません。音の長さは前後の音や話す速さで変わります。数値より、余計な母音を足さずに次の音へ移れるかを確認してください。
全単語を書き取る練習は意味がありますか?
精聴として細部を調べる目的には使えます。分からなかった語や音を確認し、再度聞くところまで行います。会話中に一語へこだわり続ける聞き方とは使い分けましょう。
フラップTも同じですか?
別です。フラップは舌がごく短く接触する音で、主に北米英語などで観察されます。「破裂がはっきり聞こえない」という印象だけで一つにまとめないようにします。
参考にした発音資料
- BBC Learning English:Tim’s Pronunciation Workshop — Plosives
- British Council:Connected speech — part 2
- University of Groningen:Glottal reinforcement and glottal stopping
まとめ:聞こえない理由を分け、一文で確かめる
語末のtやdが聞こえにくいときは、未開放・脱落・声門閉鎖を分けて考えましょう。意味と文の構造を理解し、細部を試してから原文を確認し、同じ音声に戻ります。すべてを分類できる必要はありません。まず一文を選び、「どの境目が不確かか」を具体的にするところから進めてください。
01
2分:まず聞く
原文を閉じて不確かな箇所を探す
02
3分:照合する
意味と構造、文字と音を確かめる
03
3分:真似する
短く発音し録音を比較する
04
2分:再確認
原文を閉じて聞き、次の課題を残す
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