簡単な単語ばかりなのに聞き取れないとき、原因の一つは、単語と単語の間で音がつながるのに、1語ずつ区切って聞こうとしていることです。この「音のつながり」を、英語指導ではリンキングと呼びます。
Check it out. や Take it easy. のような短い表現が、会話では一続きの音に聞こえて、知っている単語なのに拾えない。そんな経験をしたことはないでしょうか。
この記事では、音のつながり方を「子音+母音」「同じ子音」「母音+母音」の3つに分けて整理します。後半では、自作の短文10個を使って、意味の確認と声に出す練習を進めます。なお、日本語では「リエゾン」と呼ばれることもありますが、この記事では英語の指導で使われる「リンキング」で統一します。
リンキングとは? 単語の境目で、音がつながること
British Councilの英語教師向け資料(TeachingEnglish)では、リンキングを「音をつなげたり、2つの音の間に別の音を差し込んだりして、話しやすくすること」として紹介しています。たとえば I did it! では、語末の /d/ から it の母音へ続けて発音されます。また I am では、間に /j/ に近い音が入ることがあります。
つまり、リンキングは「単語がくっつく」だけの現象ではなく、音をなめらかに続けるための調整と考えると分かりやすくなります。
ここで大切なのは、リンキングは必ず起こるルールではなく、起こりやすい傾向だということです。同じ人が同じ文を言っても、ゆっくり話すとき、強調するとき、速く話すときで、つながり方は変わります。この記事で示す音の説明は、典型的な例であって、すべての話者に当てはまるものではありません。
簡単な単語が聞き取れなくなる理由
リスニングで、1語ずつ区切って聞こうとすると、次のようなことが起こりやすくなります。
- 実際の音は「check it out」でひとまとまりなのに、「チェック」「イット」「アウト」の3つの音を待ってしまう。
- 待っている間に、次の音が流れてしまい、追いつけなくなる。
- 知っている単語なのに、「聞いたことのない音」に聞こえる。
文字で見ると別々の単語でも、音ではつながっていることがあります。文字と音の差に慣れる練習として、自分でつなげて言ってみるのが一つの方法です。
3つのつながり方を押さえる
リンキングは、前の単語の最後の音と、次の単語の最初の音の組み合わせで、3つに分けて考えると整理しやすくなります。
01
子音+母音
check‿it:/k/から母音へ
02
同じ子音
this‿seat:/s/を続ける
03
母音+母音
go‿out:/w/に近い渡り音
① 子音+母音:前の語の終わりに、次の語の母音が乗る
前の単語が子音で終わり、次の単語が母音で始まるときの組み合わせです。もっとも出会いやすい形です。
- check it out:k の音に it の母音が続きます。
- pick it up:k と it、t と up がそれぞれつながります。
- turn off:n の音に off の母音が続きます。
文字では別の単語ですが、音では前の子音から次の母音へ続きます。カタカナだけで覚えず、原稿と一致する音声で境目を確かめましょう。
② 同じ子音が続く:口の構えを保つ
前の語の最後と次の語の最初が、同じ子音になる組み合わせです。
- this seat:/s/ と /s/。摩擦音をひと続きに伸ばします。
- good day:/d/ と /d/。舌先の構えを保ち、破裂を2回はっきり分けないことがあります。
- like coffee:/k/ と /k/。口の奥の閉鎖を保ってから離すことがあります。
単に音が一つ消えると覚えるより、同じ音の口の構えを続けると捉えてみましょう。長さや開放の仕方は、話者や強調によって変わります。
③ 母音+母音:間に、小さな音が入る
前の単語が母音で終わり、次の単語が母音で始まるときの組み合わせです。2つの母音をそのまま続けると発音しにくいため、間に /j/ や /w/ に近い小さな音が入ることがあります。
- see it:間に /j/ に近い音が入ることがあります。
- go out:間に /w/ に近い音が入ることがあります。
- I am:間に /j/ に近い音が入ることがあります(上で紹介した例)。
入る音や、入るかどうかは、話者や地域によって異なります。「必ず /j/ が入る」と決めつけず、「入ることがある」くらいの理解で問題ありません。

あわせて知りたい消失・同化・弱形
音がなめらかに聞こえる現象には、リンキング以外のものもあります。用語の範囲は教材によって異なりますが、仕組みを分けて考えると確認しやすくなります。
- 消失(elision): 音が落ちて聞こえにくくなること。例:next week の /t/ が省略されることがある。
- 同化(assimilation): 隣の音の影響を受けて、音が変わること。例:Did you? が「ディジュ」のように聞こえる。
- 弱形: 機能語が弱く短く発音されること。例:to が /tə/、and が /ən/ などになる。
これらも、結果として「単語がつながって聞こえる」ことがあります。ただ、仕組みはリンキングとは別です。この記事では、リンキングの3つのつながり方に絞って練習し、ほかの現象は別の機会に確認しましょう。
練習:自作の短文10個で、意味と声出しを確認する
次の10個の短文は、この記事用に作った練習文です。それぞれ、意味と、つながる箇所(‿で表示)、練習のポイントを載せています。音声では、自然につなげた読み方と、語を区切った比較用の読み方を聞き比べられます。区切った読み方は、会話のお手本ではなく、つながる前の語を確認するためのものです。
子音+母音(4つ)
01. Check‿it‿out.
意味:見てみて。/チェックしてみて。
練習:「check」「it」「out」と区切って1回、つなげて1回言います。つなげたとき、k の次に母音が来るのを感じてみましょう。
02. Pick‿it‿up.
意味:拾って。/持ち上げて。
練習:it と up の間が、t の音でつながります。区切って言ったときと、口の動きがどう変わるかを比べます。
03. Turn‿off the light.
意味:電気を消して。
練習:turn の n に off の母音が続きます。light の前の the は短く弱く読みます。
04. Hold‿on‿a minute.
意味:ちょっと待って。
練習:hold の d に on、on の n に a がつながります。つなぎ目が多いので、ゆっくり、2回に分けて練習してもよいでしょう。
同じ子音(3つ)
05. Is this‿seat free?
意味:この席は空いていますか。
練習:this の s と seat の s は同じ音です。s を2回出すのではなく、1回長めに続けて言います。
06. Have‿a good‿day.
意味:よい一日を。
練習:good と day の d を、ひとつの d としてつなげます。Have‿a は子音+母音のつながりも含むので、2か所意識しましょう。
07. I like‿coffee.
意味:コーヒーが好きです。
練習:like の最後と coffee の最初は、ともに /k/ です。口の奥の閉鎖を保ってから離し、2回の破裂を無理に作らないようにします。
母音+母音(3つ)
08. I’ll go‿out later.
意味:あとで出かけます。
練習:go と out の間に、軽い /w/ のような音が入ることがあります。入れてみた場合と、入れずに言った場合を比べます。
09. I can see‿it from here.
意味:ここからそれが見えます。
練習:see と it の間に、軽い /j/ のような音が入ることがあります。can は弱く短く読まれることが多いので、see を目立たせます。
10. I‿am ready.
意味:準備ができました。
練習:I と am の間に、/j/ のような音が入ることがあります。I am の短縮形の I’m と、聞こえ方がどう違うかを比べます。
聞き取りに生かすには、どうすればいい?
自分でつなげて言う練習は、聞くときの手がかりにもなります。次のように、音声を使った確認につなげてみましょう。
- 文字で見てから、音声を聞く。 印をつけた箇所が、実際にどう聞こえるかを確かめます。
- 聞こえ方を、自分の言葉でメモする。 「ここは1語に聞こえる」「ここは区切れている」など、感じたままで構いません。
- 同じ表現が出てきたら、思い出す。 次に別の英文を聞くとき、つなぎ目が出てくる位置を予想しながら聞きます。
最初は、全部を聞き取ろうとする必要はありません。10文のうちの2〜3文でも、聞こえ方が変わる感覚をつかめれば、練習の成果です。

1日10分の練習手順
練習には、上の10文の「自然につなげる」音声から3〜4文を選べます。別の教材を使う場合も、音声と原稿が一致する素材を選びましょう。
- 0〜2分:意味と音の境目を確認する。 原稿を読み、つながりそうな位置に印をつけます。
- 2〜5分:同じ英文のお手本を聞く。 印の位置が実際にはどう発音されているか、1文ずつ聞きます。
- 5〜8分:お手本のあとに声に出す。 速さより、つながる箇所と自然な区切りを意識します。
- 8〜10分:録音して聞き比べる。 自分の声とお手本の違いを1つメモします。
お手本とぴったり同じに読めなくても、問題ありません。つなげて言ったときの違いに気づくことが、聞こえ方の予測につながります。
よくある失敗とその直し方
1. すべての単語をつなげようとする。 文の区切りや、強調したい語の前は、あえて切れることもあります。つなげすぎず、まず自然に切れる位置を意識しましょう。
2. カタカナの読み方で固定する。 カタカナ表記は目安にとどめ、音声を聞いて確かめます。
3. 消失・同化・弱形まで、すべてリンキングだと思う。 聞こえ方が似ていても、仕組みは別です。まずは3つのつながり方で整理しましょう。
4. 速く言うことを目指す。 ゆっくりでも、つながる位置を正確に意識して言うほうが、聞き取りの手がかりになります。
5. 音声を聞かずに、自分のイメージだけで練習する。 お手本と聞き比べないと、自己流のつなげ方になりがちです。
参考にした資料
例文と練習手順は、この記事用に作成しています。
まとめ:音のつながり方を知って、1語ずつ待たない
リンキングは、単語の境目で音がなめらかにつながる現象です。「子音+母音」「同じ子音」「母音+母音」の3つに分けて整理すると、聞き取りも発音も練習しやすくなります。
- 子音+母音: check it out のように、母音が前の子音に乗る。
- 同じ子音: this seat のように、ひとつにまとまる。
- 母音+母音: go out のように、小さな音が入ることがある。
- 消失・同化・弱形は別の現象。 全部リンキングと呼ばない。
01
同じ文を用意
音声と原稿のある3〜4文
02
音を確かめる
実際につながる位置を聞く
03
まねて言う
速さより音の境目を意識
04
録音して比べる
お手本との違いを1つメモ
今日は、10文のうち2文を選んで、区切って読む場合と、つなげて読む場合を比べてみましょう。
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