はじめに:「しんどい」「疲れる」は、あなたが正しい道を歩んでいる証拠

こんにちは、感覚ではなく理解で学ぶ「大人の英語スクール」代表のShigeです。

第9回では、長文のブレーキを外すリーディング(鳥の目・虫の目)と、思考を英語化するライティング(3行日記)の極意をお伝えしました。

ここまでの連載を読み、実際に「1単語1秒の超高速テスト」や「ディクテーション」「感情を込めた独り言」「3行日記」といったトレーニングを日常に取り入れ始めた方も多いでしょう。

新しい練習を始めると、疲れたり、難しいと感じたりすることもあるでしょう。

  • 「15分のディクテーションだけでクタクタになる」

  • 「英語で独り言をつぶやこうとすると、頭がショートしそうになる」

そう感じたら、練習の量や難しさを見直してみましょう。

疲れることだけで、学習がうまく進んでいるとは判断できません。何ができるようになったかを確かめながら、無理なく続けられる量に調整しましょう。

世の中の英語教材には、「1日5分、聞き流すだけで楽しくペラペラ!」といった甘い謳い文句が蔓延しています。

しかし、日本語で強固に完成されてしまった大人の脳回路を、もう一度ゼロから書き換えるのに、そんな魔法のような近道は存在しません。

今回のテーマは、練習の負荷との付き合い方です。

覚えたことを思い出す、声に出して使う。そうした少し難しい練習を続けるための考え方を紹介します。

【第1章】少し難しい練習に、どう取り組むか

世の中には、「海外ドラマを字幕で見て楽しく学習しよう」といった勉強法があふれています。

確かに、ソファに寝転がって大好きなドラマを見たり、リラックスしながらPodcastを聞き流したりするのは「楽しい」ですよね。

しかし、この「コンフォートゾーン(快適な領域)」にいる限り、あなたの大人の脳回路が書き換わることは絶対にありません。

「海外ドラマを字幕で見る」という甘い罠

海外ドラマを日本語字幕で追っている時、あなたの脳は何をしているでしょうか。

実は、ただ流れてくる映像と日本語のテキストを処理し、「物語を楽しんでいる」だけなのです。

英語の音声は耳に入っているかもしれませんが、脳には何の負荷(ストレス)もかかっていません。

「わからなくて悔しい」「自分の口でどう表現すればいいんだ」と悩むプロセスが一切ないからです。

脳が汗をかいていない、つまり「負荷ゼロ」の状態では、何千時間ドラマを見ても英語が話せるようにはならないのです。

脳は「生命の危機」を感じないと変化しない

なぜ、負荷がないと成長しないのでしょうか。

それは、人間の脳が極端な「省エネ主義」にできているからです。

慣れた日本語とは違い、英語では音や語順を意識しながら練習する場面があります。最初は時間がかかっても、短い文から試してみましょう。

そのため、脳は「今のままでも特に困っていない」と判断すれば、絶対にその工事を始めようとしません。

脳を本気で変えるには、「この未知の情報を処理できないとマズい!」という強烈なプレッシャーを与える必要があるのです。

  • 「1単語1秒」のテストで答えが出ずにもがいている時。

  • ディクテーションで未知の音波に必死にしがみついている時。

この時、あなたの脳は「やばい!今のままじゃ処理しきれない!もっと太い神経回路を作らなきゃ!」とパニックになり、急激な成長を始めます。

すぐに答えが出ないときも、少し考えてから答えを確認してみましょう。難しすぎる場合は、文を短くしたり、単語数を減らしたりして構いません。

【第2章】蝶とさなぎの寓話から、練習の意味を考える

ここで、自分で取り組む時間の大切さを考えるために、一つの寓話をご紹介します。

それが、蝶の羽化に関する有名な寓話です。

さなぎを助けた優しい男の悲劇

ある男が、木の枝についている蝶のさなぎを見つけました。

さなぎには小さな穴が空いており、中の蝶が外に出ようと必死にもがいています。

しかし、穴があまりにも小さいため、蝶は数時間経っても一向に抜け出せる気配がありません。

それを見た男は蝶を可哀想に思い、ハサミを取り出して、さなぎの穴を少しだけ切って広げてやりました。

すると蝶は、何の苦労もなく、スルリと外へ抜け出すことができました。

しかし、出てきた蝶の体は異常に膨れ上がり、肝心の羽はシワシワに縮み上がったままでした。

男は「そのうち羽が広がって大空へ飛び立つだろう」と見守っていましたが、その瞬間は永遠に訪れませんでした。

その蝶は、羽を広げることなく、地面を這いつくばったまま短い生涯を終えてしまったのです。

寓話を、自分で練習する時間に重ねて考える

なぜ、こんな悲劇が起きてしまったのでしょうか。

この寓話では、蝶が自分の力で殻から出る過程に意味があると語られています。

ここでは、この物語を自分で練習する時間を省かないためのたとえとして受け取ってください。

男の「苦労を取り除いてあげよう」という優しさが、皮肉にも蝶から飛ぶ力を永遠に奪ってしまったのです。

英語学習も、これと全く同じです。

単語を思い出そうと考える時間や、聞き取れなかった音を確かめる時間。その場ですぐにできなくても、確認してもう一度試すことが練習になります。

この「自分で試す時間」を、毎日の学習に少しずつ取り入れてみましょう。

「聞き流すだけ」「1日5分でペラペラ」という甘いハサミを使って、この摩擦から逃げてはいけません。

難しいと感じたら、休んだり、練習を小さく分けたりして構いません。無理なく再開できる形を探しましょう。

【第3章】疲労感より、できたことを言葉にする

英語学習における「しんどさ」の正体が、脳の神経回路が太くなる負荷だと理解できましたね。

しかし、頭では分かっていても、いざ机に向かって強烈な疲労感に襲われると、人間の心は簡単に折れてしまいます。

そこで最後に、単なる精神論ではなく、物理的に脳内物質をコントロールして挫折を防ぐ具体的なハックをお伝えします。

「疲れた」を「成長痛が来ている!」に言い換える

1単語1秒の超高速テストや、15分のディクテーションを終えた後。 頭がぼーっとして、知恵熱が出そうになった時。

多くの人は無意識に「あー、疲れた。やっぱり自分には才能がないのかな…」とネガティブな言葉を吐いてしまいます。

今日から、この言葉を一切封印してください。

練習を終えたら、「今日は、できなかったことを一つ練習できた」と、取り組んだ内容を言葉にしてみましょう。

疲労の強さだけで成果を判断せず、練習前後の変化を確かめましょう。「昨日は出てこなかった単語を、今日は思い出せた」といった小さな変化で十分です。

小さな達成を、次の練習のきっかけにする

この言語化を繰り返すと、脳内で信じられない変化が起こります。

筋トレを愛する人が、翌日のひどい筋肉痛を「おっ、筋肉が喜んでる!」と笑顔で歓迎するのと同じ状態です。

取り組めたことを一つ記録すると、次に何を練習するかも整理しやすくなります。

たとえば「短い英文を一つ、見ずに言えた」と書き留めてみてください。

やる気が出ない日もあります。そんな日は、前に取り組めた短い練習から始める方法もあります。

「次は、この一文を言えるようにしよう」と、小さな目標を決めておきましょう。

【次回予告】モチベーションを捨て、「無意識のシステム」を構築する

いかがでしたでしょうか。

今回は、少し難しい練習との付き合い方と、できたことを言葉にして振り返る方法を紹介しました。

どんな壁にぶつかっても決して挫折しない、強靭なメンタルを手に入れたあなたを心から祝福します。

次回のテーマは、

【第11回】英語学習に「意志の力」は役に立たない。三日坊主を科学的にハックする習慣化の技術|英語脳ロードマップ

です。

英語学習を進めていく上で、気合やモチベーションといった「不確かな感情」に頼るのを完全にやめる方法を紹介します。

そして毎日の歯磨きや洗顔のように、英語学習を日常のなかに強制的に組み込み、自動で継続させてしまう「最強の習慣化メソッド」を公開していきます。

お楽しみに。